2013年11月25日

高橋長老の御教書 新編34

           ありがたいお話であるから正座して読むよ~に

新編34 クリスマス

「今度の訪問演奏では、クリスマスにちなむ曲が入りましたね」
「やはり、季節がらクリスマスソングは欠かせないよ」
「キリストが生まれた日が、日本でこんなに盛り上がるなんて不思議です」
「まあ、彼は昔から日本とのつながりが強かった。キリストが馬小屋で誕生した時、その枕もとに東方の3博士が訪れて、お祝いしたんだ。日本の博士もその中にいて、歌を詠んだのさ。君も知っているだろう。
 蚤シラミ 馬の尿(しと)する 枕もと 」
「長老、それは奥の細道にある句ですよ」
「そう言われてはいるがね。実は、バセオ マッツィオという名の博士が詠んだものなんだが、どういうわけか、日本では松尾芭蕉という名に変わっているようだ。
キリストは聡い子供でね、生まれながらに言葉を聞き分けたと言われている。それも、10人が話す違う話を聞き分けたというから偉いじゃないか」
「えっ、それは聖徳太子の話でしょう」
「いやいや、馬小屋で生まれたキリストが「馬小屋の御子」と呼ばれ、その話が日本に伝わって、厩戸の皇子(みこ)、すなわち聖徳太子と結びついたんだよ」
「初耳です」
「キリストが御子と呼ばれていたのは、歌に残っている。
 み告げ受けし羊飼いらは、御子のみ前に額ずきぬ 畏みて
とある。これもよく知られた歌だよ」
「それも昔から伝わった歌なんですか」
「そうなんだよ。ただ、古い歌は、どうしても真似をされたり、替え歌になったりして、現代の歌として認識されがちなんだな。
 それからキリストが言った「狭き門より入れ」という有名な言葉がある。これは、小さな入口から入ると、どんな身分の高い人でも頭を下げなくてはならなくなるということで、身分差別をなくそうという思想なんだな。これも日本的な考え方なのさ」
「えっと、確かそれは茶室の躙り口の事なんじゃないですか」
「キリストは、どこかで千利休の思想に触れたんだな。それを彼なりに解釈して、『狭き門より入れ』という言葉になったと考えられている」
「利休よりキリストのほうが、ずっと早く生まれたと思いますが」
「キリストのような神様は、時空を超越した能力を持っているのさ。千年以上後の世界の事も御見通しなんだ。とにかく全知全能だから」
「いくら神様でも、それは無理なんじゃないですか」
「いいじゃないか、とにかくクリスマスは日本では大人気なんだ。特に、プレゼントをせがんでも怒られない季節。子供達や女子達は、この日の来るのを待ち望んでいる。男どもはとても逆らえない。諸人こぞりてお祝いしよう」

漢字の読み方
厩戸    うまやど
額ずきぬ  ぬかずきぬ
畏みて   かしこみて
躙り口   にじりぐち
  


Posted by 静岡マンドリン愛好会 at 21:35Comments(0)高橋長老の御教書