2014年01月22日

高橋長老の御教書 新編37

             ありがたいお話であるから正座して読むよ~に

新編37 細川ガラシャ

「フェスティバルでやる『細川ガラシャ』は楽しい曲ですね」
「そう、特にギターが琴の音色を表現する部分は、楽しいね」
「鈴木静一の曲はいい曲がありますね」
「僕が学生の時には、『黎明序曲』とか『山の印象』なんか、ずいぶん演奏されていたけど、その後聞かなくなっていた。最近、また取り上げられるようになって、嬉しいよ」
「なかでも『細川ガラシャ』は、人気が高いです」
「僕も好きなんだけど、ちょっと気になるところがある」
「えっ、何ですか」
「細川ガラシャって名前さ。当時、彼女はそんな呼び方はされなかった」
「そうなんですか」
「彼女の本名は、明智玉なんだ。ガラシャという洗礼名をもらっても、明智ガラシャと名乗ったはずだ」
「でも、彼女は細川忠興と結婚していますよ」
「日本は、歴史上ずっと夫婦別姓だったんだよ。北条政子は源頼朝と結婚しても北条政子のまま、日野富子は足利義政と結婚しても日野富子、江姫は徳川秀忠と結婚しても浅井江だった。西欧風に夫婦同姓となったのは、明治維新後のことさ。細川ガラシャという名も、明治になってからカトリックの人達が言い始めて一般化したんだ」
「そういえば、中国や韓国は夫婦別姓ですね。東洋では夫婦別姓が主流なんですか」
「僕は学者じゃないから正確なことは言えないけど、本来夫婦別姓という民族の方が多数派だったんじゃないかな。文化人類学の先生に訊いてみたいね」
「そういえば、フランス王妃の中に『カトリーヌ ド メディシス』とか『アンヌ ドートリッシュ』とかいますね。あれはメディチ家のカトリーヌとか、オーストリアの、つまりハプスブルク家のアンヌという意味でしょう。あの時代は、フランスも夫婦別姓だったんですかね」
「細川ガラシャからとんだところに来てしまったね」
「今、日本で夫婦別姓を認めてという声が高まっていますが、長老はどう考えているんですか」
「僕は、夫婦別姓でもかまわないと思う。それで家族の紐帯が失われるとは思えない。要は、夫婦の信頼関係がどれだけ強いかってことだと思うよ。夫婦同姓であっても、これだけ離婚が多いんだから、家族の紐帯と夫婦同姓とは関係ないじゃないかな」
「それじゃ、細川ガラシャは明智ガラシャと改めるべきですか」
「別にそれほどこだわることはないさ。もう歴史上の人物だし、一般的に細川ガラシャで知られているんだから、いまさら明智ガラシャにしろなんて言っても混乱するだけだよ」
「本人の希望はどうなんですかねえ」
「う~ん。夫婦の間の事は他人には知りようがない。本能寺の変以後、お玉は忠興からずいぶん冷たい仕打ちを受けて、夫婦関係が冷え込んだように見えるけど、子供も産んでいるしね。彼女の気持ちはどうだったんだろう。我々が細川ガラシャと呼んでも、それが不快なのかどうか。キリスト教に入信して、もうそんな浮世の些事は超越していたかもしれないね」


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Posted by 静岡マンドリン愛好会 at 22:34│Comments(0)高橋長老の御教書
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